第4章 心の縁-よすが-《前編》
「おちびちゃん……さ、さわっても、だいじょうぶですよ」
五虎退が少し緊張した声で言うと、虎の一匹が前に出てきた。
「…とらさん」
あんずがしゃがんでそう呼ぶと、一匹の虎がゴロゴロと小さく喉を鳴らして、すりすり、と気持ちよさそうにあんずに頭をこすりつけた。他の虎たちもそれを見て、もう一匹、もう一匹と寄ってきてあんずの周りに自然と集まる。
囲むようなその光景に乱は「…守られてるねえ」とくすっと笑った。
「虎さんたち、優しいでしょう?」
五虎退がそう言うと、あんずはうんうんと頷きその小さな手で虎の背中にそっと触れてみた。するとふわっとした温もりが掌に伝わる。
「とらさん、ふわふわであったかい」
そのままゆっくり撫でていると、一匹がころんと横になりお腹を見せた。
「…とらさん、ねむたい?」
「ふふ…安心してるんですよ」
「あんしん?」
あんずが不思議そうな顔で聞き返すと、五虎退は「おちびちゃんが大好きってことです」そう答えながら微笑んだ。
少し離れた柱の陰で、相変わらず大倶利伽羅がその様子を見ている。その輪の中に入ろうとはしないが、視線は酷く柔らかい。