第4章 心の縁-よすが-《前編》
「こんな時間まで起きてる子がいたからね。差し入れだよ」
そう言って、あんずの前にマドレーヌが乗った小さな皿を「はい、静かに食べようね」と差し出した。それを見たあんずは目を輝かせる。
「何時だと思っている」
「固いこと言わないの!…おちびちゃん、今日だけだよ?ママには内緒だからね?」
「…から、ちゃ?」
あんずの不思議そうな声に、燭台切は一瞬きょとんとしてからすぐに柔らかく笑った。
「ああ、そうだよ。この人は伽羅ちゃんっていうんだ」
「おい…」
あんずは大倶利伽羅を見上げる。黒い服に怖そうな顔。でも…何度も助けてくれたり、抱っこしてくれたり、ここで子供向けの映像も見せてくれている優しい人。
「から、ちゃん」
「…やめろ」
辿々しく音をなぞると、即座に低い声が落ちてくる。キッと鋭い目で睨みつけられた燭台切は肩をすくめた。
「いいじゃないか。子ども相手に今さらだろう?」
「…」
大倶利伽羅は言い返さなかった。そのやりとりをじっと見ていたあんずは、少し考えてからもう一度確かめるように言葉にする。
「からちゃん…」
「…」