第4章 心の縁-よすが-《前編》
短い言葉。それだけだったけどあんずは大倶利伽羅の背中を追いかける。向かった先は審神者部屋からそう遠くない、誰も使っていない客間だった。
灯りを落とし、客間に元々置いてあったテレビで子供向けの映像を流す。あんずは何も言わず彼のすぐそばに座った。
「これでも観てろ」
ぶっきらぼうにそう言って、彼は何をするでもなく隣にいる。しばらくしてあんずが思い立ったように顔を上げた。
「…えほんがいい」
「悪いが本はない…」
「へやにあるよ?」
「…部屋に取りに行くとあいつが起きる」
「ママ?…ママ、おきちゃう?」
「…ああ、だから本は次だ」
あんずも母を起こしてしまうのは不本意だったのだろう。ぐっと唇を噛んでそれ以上は何も言わず、映像を見始めた。
そこへ、ことりと軽い足音がした。それに気付いた大倶利伽羅は不機嫌そうにチッと舌打ちをする。
「やあ、伽羅ちゃん」
にこりと笑いながら入ってきたのは燭台切光忠だった。手には盆を持ち、盆の上にはお菓子のようなものが乗っている。
「用があるなら簡潔に言え」
そっぽを向いて放たれるぶっきらぼうな大倶利伽羅の返事にも、燭台切は気にした様子もなく笑った。