第4章 心の縁-よすが-《前編》
そう思い無意識に距離を取っていたのだ。勿論慣れ合うつもりも一切なかった。だからこうして腕の中に抱き留めることになるなど、彼自身思ってもみなかった。
腕の中にいるあんずは驚くほど軽く、その身体はあまりにも簡単に折れてしまいそうだ。
「……」
抱き上げたまま、大倶利伽羅はあんずに視線を落とす。怪我はなかったかとあんずの身体に一通り目をやるが、泣いてはいないし怯えてもいない様子に大倶利伽羅は安堵した。
あんずと大倶利伽羅が接点を持ったのはこれが初めてであったが、あんずが恐怖よりも先に浮かんだのは好奇心だった。
あんずはじっと彼を見上げ、まるで前から知っていた相手であるかのように無邪気に瞬きをしている。
――無防備すぎる。
大倶利伽羅がそう思った直後、あんずのほうが先に口を開いた。
「ありがとっ!」
あんずの屈託のない笑顔に、大倶利伽羅は一瞬言葉を失った。本丸にいる刀剣男士にこんなふうに無防備に話しかける人間などいない。この子の父親でさえどこか一線を引いていて、こんなに無防備になることはないというのに…
「ねえ、あなただあれ?おなまえは?」