第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「……ちょっと、詳しく聞かせてくれよ」
鶴ちゃんの視線が真っすぐに向けられている。その声は穏やかだけど、静かに見つめるその眼差しには一切の逃げ場がないように感じた。
ずっと引っかかっていた、あの呉服屋で見た光景。そして、偶然写真に写り込んでいた彼と、あの女性の並んだ姿。肩を寄せ合い楽しそうな二人がまるで恋人同士のようで、とても幸せそうに見えた。だから……信じたいのに、信じきれなかった。
「……だって、鶴ちゃんには、もう……」
声が震える。その先を言うのが怖くて、唇を噛んだ。けれど、沈黙の中で鶴ちゃんはただ黙ってその先を私が言うのを待っている。
「……新しい人がいるんでしょう?」
かすれた声でようやく絞り出すと、鶴ちゃんの瞳がわずかに見開かれる。
一拍の間をおいて、彼はふっと息を吐いた。
「なんだ、そんなふうに思っていたのか」
声は柔らかい。けれど、その声と表情に寂しさが滲んでいるように感じるのは一体…
「俺にそんな相手がいるわけないだろ……どこでどーなったらそんな話になるんだ」
「だ、だって…」
「色々と誤解があるようだな……あんず、一体なんのことかきちんと説明してくれ」