第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
その手を振り払って逃げようにも身体が動かせない。
怖い…怖い…!
いつもの優しい鶴丸さんじゃない…
どうして急にこんなこと…
恐怖で目に涙が滲み、次第にそれが頬を伝う。それに気付いている筈なのに、それでも鶴丸さんはやめてくれなかった。
「やだ、!鶴丸さん!!……んぅっ………はっ……ま、待つって言った!!んんっぅ!…ぁ、ぐ……つる、ま、やだ、なんでえ…っ!!」
私の記憶が戻るまで、私の心が完全に開くまで手は出さない、そう言っていたのに…なのにどうして?…―やっぱり、嫌気が差してしまったの?何も思い出せない私に腹を立てているの…?
「ん、…つ、るまるさっ…んん…」
ちゃんと話がしたい、喉元から声を絞り出して彼の名前をやっと口にすると、力任せに奪われていた唇が離れていった。そして粗い呼吸と共に鶴丸さんの鬼気迫った顔が視界に映る。
「……じゃない」
「っ……な、に…?」
ポツリと聞こえた彼の震えるような小さな声。何と言っていたのか聞き取れなくて恐る恐る聞き返すと、叫ぶように彼は言葉を口にする。
「鶴丸さんじゃない…鶴ちゃんだろう!きみはいつも俺をそう呼んでいたっ!鶴丸さんじゃない!!それにいつまでその眼鏡をかけているつもりなんだ!?…一体いつになったら俺に心を開いてくれる!?」