第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「っ…ち、違います…記憶はまだ……でも…」
「でも――?」
「わ、私達の関係って……どこまで…す、進んでいたのかなって…ふと思いまして…――っ!!あっ!や、あの!やっぱり何でもないっ」
恥ずかしくなって慌てて部屋から立ち去ろうとお盆を持とうとする私の手を、鶴丸さんの手が遮って聞こえた声。
――気になるなら…試してみるかい…?
次の瞬間、腰を抱かれたと思ったら引き寄せられて、鶴丸さんの綺麗な顔が目の前に迫っていた。
「え、な…にを………っ」
驚いて目を見開いて動けないでいる私の唇に鶴丸さんの唇が重なる。だけどそれはすぐに離れて、鶴丸さんが至近距離で「思い出したかい?」と聞いてきて、気が動転したまま小刻みに首を振ると、「じゃあ、これはどうかな?」と言いながら鶴丸さんの唇がまた重なった。
今度もすぐに離れていくと思ったのに、鼻先が擦れ合って、眼鏡が上に少しずれたと感じた時に、重なった唇の隙間から突如彼の舌が入り込んできた。
「っ!!」
「ん…あんず」
「っ……やっ!!」
急な出来事に半ばパニックになった私は、どんっと音が出るほど勢いよく鶴丸さんの胸を押して、部屋の隅へと背中をくっつけるようにして後退った。