第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「いきなり恋仲だって伝えたところで混乱させるだけだろう」
「そうかもしれないけどっ!だからって何も言わないなんて」
「現に…勝手に部屋に入るなって怒られたんだぜ……本当に…全く覚えていないんだよなあ……流石にきついよなあ…」
少し遠い目をしながら悲しげにポツリと呟いた鶴丸の瞳は揺らいでいた。
燭台切はそんな鶴丸を見て、酷く悲しそうに眉を寄せて、手に持っている小さく折りたたんだエプロンを力任せにぎゅっと握り締める。
「光坊…あんずは…本当は俺に嫌気が差して、俺とのことをなかったことにしたかった、ということはないか…?」
蜂須賀にいっそのこと思い出さなくていいと言われた言葉が鶴丸の頭を過ぎる。
それはあんずを失いたくないばっかりに、あんずの気持ちも考えずに他の刀と契ってくれと頼んだ事を責めているのかと鶴丸は思ったが、蜂須賀があの夜の一連の出来事を知っているわけがない。
だったらどうしてそんな事を言うのか…どうしてそんなことを言われなければならないのか…それが分からなくて燭台切に問うと、燭台切は目を見開き反論した。