第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
笑いながら私の隣にドカッと胡座をかいて座った和泉守さんは、胡座をかいた足の膝に方杖を付きこちらをじっと見つめる。
「…私、皆さんに迷惑掛けっぱなしで…」
「あん?記憶のことなら誰も迷惑なんて思ってねえよ。それに、そんなもんどーんと構えてりゃ嫌でも思い出す日が来るって。だから思い詰めんな」
「……あの…和泉守さん……私、私ね、こんのすけに聞いたんです…鶴丸さんと恋仲だったこと……」
「っ、聞いちまったのか…」
「はい…私に気を遣って皆さん隠してくれてたのにすみません…何を忘れているのかどうしても知りたくて……でも、教えてもらったのに何も、何一つ思い出せないんです。…それに私、記憶がないとはいえ、鶴丸さんに酷いこと言っちゃって…それでなくとも辛い目に合わせてるのに……でも今彼に謝ったところできっと彼を余計苦しめることになる…だから、もう、どうしたらいいのかわからないんです」
鶴丸さんの戦績や特性など、刀としての彼の事は全てしっかりと覚えている。だけど彼との私事だけがすっぽり抜け落ちている。
恋仲だった記憶が全くないから、鶴丸さんと本当に恋仲だったのかなって疑ってしまう時もあった。