第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「そうですね……こんのすけ――話してくれてありがとうございます――」
いくら記憶を手繰ろうと思い出せないのだから、今の私にはこんのすけにそう答えるしかなかった。
ただ、もう部屋に来ないから、そう告げられたあの日から鶴丸さんは私を避けるようになった。私も…彼との記憶がないまま鶴丸さんにどう接すれば良いのか分からなかったから、彼に話しかけることさえ出来なくなっていた。
皆と一緒に広間でご飯を食べて、演練に行ったり執務をこなしたり…何事もなかったように時間だけが過ぎていく。
どうして他のことは全部覚えているのに、鶴丸さんの事だけ何も思い出せないの…?
なんだか自分だけが取り残されて時が止まっているような感覚だ。皆今までと変わりなく優しいけれど、鶴丸さんと私が恋仲だったという話題だけは触れないようにしてくれているのがわかる。
私のせいで本丸内がギクシャクしている。それがとても申し訳ないし辛い。このままじゃ…出陣にも影響を及ぼす日がくるかも知れない…―
「そんな辛気くせー顔して一人でなぁにやってんだよ」
「…ッ!和泉守さん」
「何か思うことがあるなら格好良いオレに打ち明けてみたらどーだ?案外スッキリするかも知んねーぞ?」