第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「……っ、こ、い仲…?は、…――まさか…」
「あんず様は何故か、鶴丸様との思い出の記憶を無くしてしまったようなのです」
「鶴丸さんとの記憶だけ…」
鶴丸さんと恋仲だった。それは私にとって想像を超えるほどの事実だった。
だとしたら、靄がかかったようになっているその部分が彼との記憶?彼とのことが全く思い出せない私にとっては、恋仲だったという事実は信じられないけど、鶴丸さんの態度、私の部屋にいつも入っていたと言っていた事、それに私を見る表情を考えると妙に納得がいく。
きみは本当に忘れてしまったんだな
大したことじゃないから忘れてくれ
鶴丸さんに言われた言葉が頭の中でループする。
大したことじゃないって、違う…凄く大切なことだった……
恋仲の相手に自分のことだけ忘れ去られたらどんなに悲しいか。それなのに鶴丸さんは自分のことより私のことを優先して…私が思い詰めないように配慮してくれていた。
なのに、なのに…私はなんて酷いことを彼に言ってしまったんだろう…
「あんず様、今は思い出せなくて色々と混乱しているかと思いますが、きっとその内自然と思い出せる日が来ると私は信じています。だからそんなに思い詰めないでくださいね……お医者様も悩みすぎるのは良くないと言っていましたから」