第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「……もう…いいですよ…いいんです。―葉月さんに裏切られたときは正直辛かった…でも今は大丈夫です。だからもう気にしないで下さい。…それに、葉月さんの事は恨んだりしてません」
これは私の本心だった。確かにあの時は言いようのない悲しみと悔しさ、色んな感情が入り乱れて沢山泣いた。とてもじゃないけど一人では立ち直れなかったと思う。
でも…傍にずっといてくれた人のお陰で、葉月さんもきっと辛かったんだ、って思えることが出来たんだよ。
って、、、あれ…?
ずっと傍にいてくれた人……
それは…―誰だった…?
どうして葉月さんのこの一連の出来事は思い出せるのに、慰めてくれた人の顔や声を思い出せないんだろう。
「っ、……あんずちゃん、ごめん、ごめんなさい…無理しないで?……今すぐ許してもらおうなんて思ってないから…」
涙を流しながら立ち竦んでいる葉月さん。その姿を見てハッとした。きっと喪失感が顔に出ていたんだ。葉月さんはそんな私の顔を見てそれを無理していると思った…?
誤解ですと伝えたくて咄嗟に葉月さんを抱き締める。体にはっきりと伝わる葉月さんの優しい温もり。それは養成所での彼女そのものだった。
「もう本当に大丈夫ですから…」