第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
そんな不安な気持ちが表情に出てしまっていたのか、蜂須賀さんは私を気遣って、無理に思い出そうとすると余計負担がかかるかもしれないから、気負わずにいつも通りに過ごそうと言ってくれた。
こんのすけや皆からも同じように言われた…心配ないよ、と笑顔で接してくれる皆。これ以上私のことで皆に心配かけるのは忍びない…
私に出来ることはお医者さんにも言われた通り、時間の流れに身を任せることだけだ。
記憶障害があると言っても生活や審神者業には何の支障もなかった。それだけは不幸中の幸いだ。相変わらず何も思い出せない日々が続く中、蜂須賀さんがたまには外に出て気分転換でもしようと提案してくれた。
万屋街に行き、私の大好きな甘味処の暖簾をくぐろうとしたところで突然女の人に声を掛けられた。
「あんずちゃん…!」
「……っ、葉月、さん――?」
そこにいたのは葉月さんだった。葉月さんとはあの出来事以来だけど、あの日最後に見た彼女とは大分印象が変わっていた。長かった髪の毛もバッサリ切られていて、髪の色もあの時とは違い明るい。