第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「わかりません…こんな事例は初めてです。今回の相手の刀剣も服用後は特におかしなことはないというのに、あんず様に限ってどうしてこんなことに。……とにかく至急政府に調査をお願いします。あと、他の皆さんには私から高熱で記憶が飛んでしまったようだと、そのように伝えておきます。でないと混乱が起きてしまいますので。鶴丸様もそのように対処お願いします。万が一あんず様に聞かれたとしてもそのように答えて下さい。くれぐれもあの夜の件だけは口外なさらぬように」
「ああ勿論だ。とにかく原因がわかったら真っ先に俺に教えてくれ」
「はい、勿論です。では私は早速皆さんに伝えてから政府に掛け合ってきますね」
「ああ、頼んだぞ」
あんずは俺との記憶だけが消え去っている。他の事はあの晩以外は全て覚えている感じなのに何故なんだ。あの薬の不具合だとしか思えない。
もしもこのままあんずの記憶が戻らなかったら…今までの思い出も意味のないもの、なかったことになってしまうのか?
段々と俺に心を開いていく当時のあんずを、もう戻らないかも知れない過ぎ去った日々に思いを馳せた。
不安を抱えたまま時間だけが過ぎていく。