第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
本当に酷なことをさせてしまった。だが俺は、何をしてでもきみに生きていて欲しかった。俺の傍からいなくなるなんて考えられなかった。
罪悪感に苛まれながらも目の前の、愛おしい存在にそっと触れる。熱が出ていた。あの日のように。
まさかあの日が運命の分かれ道だったなんて誰が想像しただろうか…あの時俺の神気が適合していれさえすればこんなことにはならなかったのに。
目覚めたあんずはあの夜のことだけじゃなく、俺との事を、俺と恋仲だった事まで忘れているようだった。
「こんのすけ……ちょっといいか」
様子のおかしいあんずを部屋に残し、俺はこんのすけに耳打ちし近くの空き部屋に連れ出した。
「あんずだが…様子がどうも変だ」
「変とは…?」
「昨晩の件も含めてここ数日どころか、俺との事も覚えていないみたいなんだ」
「っ、鶴丸様…?記憶を……?まさか、鶴丸様はまだ薬を飲まれていないのですか!?」
「――ああ、俺は飲んでいない。最初から飲む気はなかった」
「どうして…」
そう言うこんのすけに俺があんずに頼んだからだ、と伝えた。俺があんずを失いたくないばかりに契を交わしてほしいとお願いをしたようなものだ。