第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
【#3 空白の思い出】
熱が出た。
体が鉛のように重たい。
以前、鶴ちゃんと結ばれた次の日に熱が出たとき、あれは、結局鶴ちゃんの神気を取り込んだことで出た熱だった。
単なる風邪だと思っていたそれは、拒否反応だったのだ。まさにあの時と同じ状況に置かれている今なら手に取るようにわかる。熱の出方も、この身体のだるさも何もかもが酷似しているから。
あの後熱が引いて霊力が安定していれば…―と考えても意味はない。
熱に浮かされて頭がぼーっとしているのに、余計なことばかり考えてしまって眠れない。なんだか私だけが大きく変わってしまった気がした。
戒めのために薬を飲まずに過ごそうと思っていたけど……この件を都合よく忘れて、何食わぬ顔して審神者を続けるなんて、そんなことしてはいけない…―そう思っていたのに、色んな事に押し潰されそうで、耐えられそうになかった。
「ごめんなさい……許して……――」
ベッドから重い体をゆっくりと起き上がらせて、サイドテーブルにあるこんのすけから預かった薬を手に取る。
なんの変哲もないただの白い錠剤。こんなので本当にこの件を忘れることができるのだろうか。
鶴ちゃんはもう飲んだのかな…
目が覚めたときには、今まで通りの生活に戻っていて、鶴ちゃんはきっとあの女の人のところに行ってしまうんだろうな……でもそれでいいんだ。仕方のないことなんだ。それをわかっていて決断したのだから。
……――いっそのこと鶴ちゃんとのことも忘れてしまえれば楽なのに…