第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
さっき鶴ちゃんがのこんのすけとのやり取りで誰でも飲めるのかと聞いていたのは、そういうことだったのか…やっぱり鶴ちゃんは優しいね…
「鶴ちゃん…ありがとう……私のせいで…ごめんなさい…」
「誰のせいでもない。きみは自分を責めてくれるな…」
その後、こんのすけに二人で出した結論を伝えた。
そして相性が良い相手は一体誰なのか聞かないままその日を迎えた。私にとって相手が鶴ちゃんでないなら誰でも同じだったから……
当事者以外には知られないように内密にことが進められたことには感謝しかない。
すっかり皆が寝静まった時間、皆が眠る部屋とは反対の、遠く離れた部屋に足を向かわせる。
そしてピッタリと閉められた襖の前で足を止めた。
この襖の向こうに、この件を承諾してくれた刀剣がいる。こんのすけから聞いたところによると、主のために役に立てるならどんなことでも喜んで引き受ける、とそう言ってくれたそうだ。
正直、よく承諾してくれたな…と思う。
もしかしたら承諾せざるを得ないだけだったのかも知れない。薬を飲んで忘れることが出来たとしても、神気を分けるために好きでもない女を抱かなければいけないのだ。例えこの本丸の、仲間の為だといえども、そんなの苦痛でしかないに決まっている。
ごめんなさい……
罪悪感に苛まれた。だけどそれ以外は不思議と落ち着いていた。
物音一つしない静まり返った、月明かりだけがぼんやりと辺りを照らす中、私はそっとその襖を開いた――