第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
そんな姿を見ると心が傷むと同時に、この状況は決して夢などではないということを、知らしめられる。
こんのすけは心配そうに私を見つめた後、弱々しく頭を下げ、その場をあとにした。
二人きりになった執務室は凍てつくような沈黙に包まれている。彼に何て言葉をかけていいのか全然思い浮かばないし、鶴ちゃんに何を言われるのかも怖くて堪らない。
鶴ちゃんの顔を見れないまま時間ばかりが過ぎていった。
「……鶴ちゃん…ごめんなさい……こんなことになってしまって…ごめんなさい」
顔をあげることができないまま、謝るしか出来ない私を鶴ちゃんは何も言わずその胸に引き寄せた。何も言わないけどゆっくりと背中を擦られ、今の今まで堪えていた涙が零れ落ちた。
鶴ちゃんの温もりに包まれた途端、言いようのない哀しみに襲われる。それまではきっと心が追いついていなかったのだろう。
「…っ、う、……えっ…」
彼の服を濡らしてしまうのに、頭を柔らかく胸板に押し付けられて更に涙が出る。くしゃり、と髪を撫でてくれる手は、好きと告げられた日と同じように相変わらずどこまでも優しかった。