第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「わかってます…ちゃんと今夜話すつもりですからっだから、蜂須賀さんからは鶴ちゃんに何も言わないで下さいっ…お願いします」
「…………わかったが…今回きりだ。これ以上は目を瞑ってやれない。俺にとってはあいつよりもあんずが何よりも大事だからな」
「蜂須賀さん……」
「それに…悪いが結果次第では俺も考えさせてもらうということを忘れないでくれ」
私の必死の願いに蜂須賀さんは渋い顔をしながらも頷き、そう答えてこの場を後にした。彼の背中を見送りながら鶴ちゃんとあの女の人のことが頭を過る。
私なんかよりずっと綺麗な女の人だったなぁ――
刀といっても、鶴ちゃんは立派な成人男性と変わりない。人間の男の人のように性欲だってあるし、私以外の女の人を好きになってもなんらおかしくない。人を好きになる心は誰にも止められないし、自分ですら制御できないものなのだから…
現に私もそうだった。
それに――鶴ちゃんは平安時代に打たれた刀で、その時代は一夫多妻制だ。もしかすると彼は他の女性に目移りするということ自体、悪いこととは思っていないのかもしれない。