第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
「いやでもあいつには主がいるんだからそれはないでしょ。きっとたまたま知り合いに会っただけなんじゃない?」
「それもそうだよねっ、鶴丸が主を裏切るわけないよね」
頭を鈍器で殴られたような気がした。きっとその人はあの簪の彼女に違いない…また会っていたんだな、と絶望しかなかった。
「あんず」
部屋に戻る途中、突然後ろから呼び止められ振り向くと、そこには怒気を含んだような表情の蜂須賀さんが立っていた。
「蜂須賀、さん…?」
「あんず、あいつとは話をしたのか?」
「っ、……まだ、です」
「やはりそうか……最近のあんずは見ていられない。話せないと言うなら俺が話をつける」
「そ、それだけは駄目ですっ」
「あんずはいつも何かあっても一人で抱え込んで皆を頼らない。今は短刀たちも遠慮して何も言ってこないが、最近は特に主の顔色が悪い、体調が悪いんじゃないかと皆影で心配しているのを知っているのか?」
「っ、ごめんなさい…」
「原因はあいつなんだろう?早くケリをつけないと、皆に気付かれる。そうなって困るのはあんずじゃないのか」