第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
きっと主として慕ってくれる内に、一緒にいる時間が多くなる内に、恋情だと勘違いして、勘違いしたまま一線を超えてしまって……
あの子に出会ってそれで気付いたんだ、やっぱり違うって。そう考えながらも頭の隅では、少しの可能性に縋る自分がいて……
せめて冷たくしてくれれば私の決心もつくのに、と思わずにはいられなかった。
……鶴ちゃんは残酷だ。
彼は私に手を出さなくなった事以外は今までと同じように私の側に居てくれるし、決して嫌われているような素振りではなくて…でもそれが、私にとっては辛くて仕方がなかった。
この日は布団を濡らしながら意識を手放し、いつのまにか朝を迎えていた。
数日後、大和守さんと加州さんの部屋を通りかかったときに偶然聞いてしまった決定的な会話。障子を開け放している部屋からはっきりと聞こえた声に、部屋の手前で足がピタリと立ち止まる。
「昨日さ、万屋行ったら鶴丸が女の子と親しげに話してるの見たんだけど…あれってまさか」
「は?単に道聞かれただけでしょ?それか見間違いじゃないの?」
「見間違いなんかじゃないし、それにどう見ても初対面な感じじゃなかったよ。なんか楽しそうだった…どういう関係なんだろ」