第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
そう言いながら、鶴ちゃんは私のかけている眼鏡をそっと外し、ベッド横にあるサイドテーブルに置いた。
「……ジューシュだと思って間違えて飲んりゃったお酒が意外と美味しかったんれす…」
「ははっ!まともに話せてないぞ……まあ、本当にそれだけならいいんだが……?」
含みをもたせたような言葉を言いながら、私の頬に心配そうに触れる手。きっと彼は無理に聞き出そうとはしない、私から言うまで。
いつもそう……鎧で固めた私の中にズカズカと踏み込んできて心ごとかっさらっていったくせに、こんな時は気遣って何も聞かない……
でも頭にずっとこびり付いているいろいろな出来事を彼に問うことなんて出来なくて、それを言ってしまったら彼が離れていってしまうんじゃないかと怖くて……
何より真実を知るのが怖くて…
すっかり自信をなくし、どうしたら彼を繋ぎ止めておくことが出来るのか全然わからない私は、彼にしがみつくだけの情けない女に成り下がる──
「鶴しゃん……しゅき……」
「おっと、今夜はいやに積極的だな。きみは飲んだら甘えたがりになるのか?」
照れくさそうにしながらも笑ってくれる彼を見ると、胸が締め付けられる。