第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
そうこうしているうちに私室のベッドへとそっと下ろされた。
「水を持ってくるから少し待っててくれ」
「……ま、」
待って、と言いかけたその言葉も鶴ちゃんには聞こえなかったのか、彼はこちらを振り返ることなく部屋を出ていった。小さい明かりを灯した部屋に一人残されて、無性に寂しくなり泣きたくなる。
初めて結ばれたあの日以来、どうしてキス以上のことをしてくれなくなったの?
初めてで上手に出来なかったから嫌気が差した?面倒臭くなった?
それとも私の体……変だった?幻滅したの……?
あの人のことは抱いているの?
いつから?
私よりあの人が良かった…?
聞きたいことが沢山ある―――
頭の中では様々な疑問文が浮かんでは消えずに溢れ返っていた。そして、かつて抱いていた劣等感に苛まれていく。
「ほら、水だ。ゆっくり飲むといい」
優しい声と共に差し出された水に、ハッと現実に引き戻される。彼に悟られぬよう笑顔を張り付けながら受け取って、ゆっくりと喉に流し込んだ。
冷たいお水がスーッと喉を伝って体に染み渡る。
「しかしきみが酒を口にするなんて珍しいな。何かあったのかい?」