第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
焦りながら止める加州さんと大和守さんが視界の隅に見えていた。
「なんだなんだ、面白いことになってるじゃないか!」
「ちょっと鶴丸!お前は止める側だろ!」
喧噪の中でも鶴ちゃんの声だけは私の耳にしっかりと届いてしまう。声を聞くときゅうっと胸が掴まれたようになって、切なくてどうしようもなくなりグラスに残っているお酒をぐいっと飲み干した。
それを眺めていた和泉守さんが「やるじゃねえか」と拍手し、それにつられるように広間には歓声と拍手の音が瞬く間に広がっていく。
皆と一緒に居ると、賑やかな場にいると、よからぬことを考えなくて済み気が紛れる。空になったグラスにまたお酒が注がれるのをぼんやりと眺めていたら、白い手が私のグラスをかっさらっていった。
「俺も混ざるとするか!…と言いたいところだがあんず、もうやめておいた方がいいぜ」
鶴ちゃんはそう言って素早く私の背中と膝裏に手を回し抱き上げた。急にふわりと浮き上がった体に抵抗をしようとしたら、驚いた様子の鶴ちゃんが私を見つめる。
「あんず…きみはこんなに軽かったか…?」
「え…?」
「っ、…いや何でもない」