第1章 君の中に墜ちる
「あんたが俺にこんな事を頼むのは尋常じゃない、他に何か理由があるんじゃないのか」
「…」
「言え」
ブンブンと首を振るも大倶利伽羅は見逃してくれず、なら管狐に聞くまでだと言いこんのすけを呼ぼうとする。
「や、やめてっ!」
咄嗟に大倶利伽羅の寝間着を掴み引き留めると、振り向いた大倶利伽羅が私の瞳を捕らえる。
その強い眼差しに、もう…逃げられない、と悟った。大倶利伽羅なら理由なんて詮索しないはず、そう思っていたのに。
「あの、大倶利伽羅…今から話すことはどうかここだけの話にして下さい。約束して頂けますか…?じゃないと、話せないっ」
「…」
大倶利伽羅は少し眉を寄せて不服そうな表情をしたけど、諦めたかのように一息吐き、「わかった。その代わり全て話せ」と私に言った。
彼の言葉に小さく頷き、意を決してゆっくり口を開く。
こんのすけに言われたことや、体調が悪いことを仕事と偽り部屋に籠もっていたこと…
私が話をしている間、大倶利伽羅は何も言葉を発せず静かに聞いてくれた。全てを話し終わった後、彼は伏せていた瞼をゆっくり上げる。
暫しの沈黙が続いた。その時間がとても長く感じて大倶利伽羅の瞳から逃れるように顔を背けた。
全身にとんでもない緊張感が走る。
正直、大倶利伽羅がどういう答えを出すのかが怖くて仕方がなかった。