第1章 君の中に墜ちる
【#2 決行の夜】
一人空しく綺麗に敷かれた布団の上で声を殺して泣いていると、突然障子の向こうから声を掛けられた。
「大倶利伽羅だ」
「っ!」
「入るぞ」
私室の向こうから聞こえる声と人影に体がビクリと跳ねた。涙を拭う暇もなく開かれた障子。そしてそこには寝間着姿の大倶利伽羅。
慌てて顔を背けるけどもう遅い。大倶利伽羅が私を見た途端目を見開いているのが見えてしまった。
「あ、…ごめんなさっ…何でもないの」
咄嗟についた私の嘘に大倶利伽羅は顔をしかめた。そして私の前に来て目線を合わせ、射抜くような瞳で私に問う。
「あんた何か隠しているだろう」
「え…な、にも」
言えない。本当の事を知られてはいけない…
下唇をギュッと噛んで何も言わずに俯くと、目に溜っていた涙がポトリポトリと膝の上に落ちてシミを作っていく。
大倶利伽羅の視線が痛い。顔を上げたら全てを見透かされそうで怖い。
どうして…
どうして来てくれたの?
こんな遅い時間になるほど迷っていたのなら、そんなに嫌なら、無理に来なくても良かったのに…
頭の中でそんな事を考えていると、大倶利伽羅は溜め息を吐き静かに言葉を口にした。