第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
鶴ちゃんの私の手を握る強さと、彼が私を見つめるその瞳から…もしかしたら私と同じ気持ちなんじゃないかと期待してしまう。
私は……もっとくっつきたいし触れたい、あの宿で私を求めてくれた時のように、また触れてほしい。この不安な心を掻き消してほしい…
私に触れてくれるのならまだ望みはあるんじゃないか、鶴ちゃんの大きい瞳を見ながら頭ではそんなことばかりを考えていた。
すると程なくして唇が触れ合った。
キスをしてくれたことによる喜びで、泣きそうになるのを堪えながら目を瞑ると、優しく触れていたそれがどんどん深くなって……彼の手が胸に触れた。全てを委ねようと身体の力を抜いたとき、鶴ちゃんは何かに気付いたようにぱっと体を離す。
そして眉尻を下げながら「すまない……」と、そう言って私のおでこに軽くチュッとキスを落として「おやすみ」と言い去って行った。
どうして謝るの?
何に対して謝ったの?
私には鶴ちゃんの考えていることが全然わからなくて…勇気が持てなくて言えなかった言葉が涙と変わって勝手に溢れた。
結局、あの女の人は誰だったのか、どうしてあの夜私に謝ったのか…理由を聞けないまま数日が経った。