第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
よく見れば、というかよく見なくても箱の大きさもお店の名前も全然違うのに…
「ありがとう……鶴ちゃん、あの……今日はどこに行ってたの?」
「ん?ああ、光坊に野暮用を頼まれてちょっとな。甘味処は帰りに寄っただけだが、一足遅かったみたいだな」
すでに光忠さんが作ってくれたカップケーキが私の目の前にあるのを見て、鶴ちゃんは苦笑しているけど、私にはそんなことはどーでも良かった。
なんせ鶴ちゃんに初めて嘘をつかれたのだから。
光忠さんに買い物を頼まれたのは私……光忠さんは鶴ちゃんが一人で買い物に行ったことを知らなくて驚いていたくらいなのに。
野暮用…か…
何も言わなくなった私に「どうかしたか?」と問う鶴ちゃん。あの女性の件で喉元まで出かかった言葉をギリギリのところで呑み込んで、どうもしないよ、ありがとう。と無難な返事をしながら笑った。すると鶴ちゃんは少し浮かない表情になる。
「もっと喜んでくれると思ったんだが……あまり嬉しくなさそうだな…」
「そ、そんなことないよ!とっても嬉しい!本当にありがとうっ!今はカップケーキがあるし…せっかくだから夜にでも一緒に食べよう?」