第3章 儚く切ない記憶の中で《後編》
愛想笑いをしながらお盆に乗ったカップケーキと紅茶を受け取り、平気なふりを装って自室に戻った。
きっと違う。
私の考えているようなことじゃない。
あの女の人とは何もない。
何か事情があっただけ。
だって鶴ちゃんは私に対してあの頃のまま優しく、て……
優しいけど──初めて抱かれたあの日以来、鶴ちゃんと私は一度もそういう事をしていない……
少しの疑惑を頭の隅に追いやって、大丈夫だと自分に言い聞かせるのに必死だった。
だって、信じたくない。信じたくないのにあの光景が脳内で何度もループして、マイナスなことばかり考えてしまう自分がいる。
「わっ!」
「っ!!」
「あんず?どうしたんだ?きみにしては珍しくぼーっとしてたぞ」
「鶴ちゃん…ッ!か、帰ってきてたの?」
「ああ、今戻ったぜ」
至っていつも通りの鶴ちゃんがそこにいるものだから、少し驚きながらもホッとしていると目の前に小さな箱を差し出された。
「これ、は……?」
「きみに土産だ」
「私、に?」
にこにこ答える鶴ちゃんを横目にそっと箱を開けると、そこには慣れ親しんだ甘味処のわらび餅が入っていた。もしかしたら鶴ちゃんが選んでいたあの簪なんでは……と一瞬でも期待してしまった自分が恨めしい。