第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
それに加えさっき見たあの厭らしいテレビの映像が鮮明に頭をよぎり、緊張が最高潮に達した。
私もその先のことは考えたことはある。
…あるけどあまりにも唐突すぎて頭がちゃんと働かない。心の準備が必要なのに鶴ちゃんは私に近付いて畳みかけるように言葉を発する。
「嫌だったら突き飛ばすなり顕現を解くなり、言霊で縛り付けるなりして俺を拒んでくれ」
「……そんなっ」
「本当に嫌ならそうしてくれないと俺も困るんだ…」
ずるい…
私がそんな事できる訳ないって、拒めないってわかってるくせに。私が鶴ちゃんを好きで堪らないこと分かってるくせに。
鶴ちゃんは私が言葉にしてちゃんと伝えるのを待っている。
「嫌なわけ、ない……鶴ちゃんあの…えっと…抱い、て…下さい」
強張って上手く動かない唇で何とか言葉を紡ぐと、鶴ちゃんが距離を更に詰めてきた。
肩と肩が触れ合うほどに近くなった距離に緊張してしまい、それとなく距離を取ろうとしたが、肩を引き寄せられて先程より密着してしまった。鶴ちゃんの手が赤くなった私の頬に触れようと近づいてきた気配。
──心臓が爆ぜる中、私は覚悟を決めそっと瞼を閉じた。