第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
「ふぅ……」
仰向けになり暫く木目柄の天井を見つめていたが、目を瞑り一息付く。そして急な睡魔に襲われていつの間にか意識を手放していた。
「あんず?」
朦朧とする意識の中、鶴ちゃんの声が聞こえたような気がしてパチリと目を開ける。
「あんず?」
やっぱり鶴ちゃんの私を呼ぶ声が聞こえる。お座敷にいない私を探しているんだ、と思ったときには鶴ちゃんがこちらに近付いてくる足音が聞こえた。
ベッドのある部屋にいることが妙に恥ずかしくて、慌ててお座敷に戻ろうとしたけどそれよりも先に「あんず?」と鶴ちゃんが少し開いた襖から顔を覗かせた。
「あっ!あの!」
驚いてまるでジャンプするかのようにベッドに座り姿勢を正した。
「いないと思ったら、ここにいたのか」
「っ、あ、うん!ちょっと疲れちゃって横になってたら寝てしまって…」
「そうか、大丈夫かい?」
「うん、へ、いき…」
思えば、お風呂上がりの鶴ちゃんを見たのは初めてだ。
水も滴るいい男とは、まさに今の彼にぴったりだと見とれてしまう反面、さっき見たテレビの映像やおもちゃ、それらのせいで厭らしい目で見てしまっている自分がいて…。