第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
『あ゙あ゙あ゙あ゙ーーー!』
大音量で鳴り響くあられもない喘ぎ声。
なんとか声には出さず心の中で叫んだ自分を褒めたい!叫んでいたらきっと鶴ちゃんが駆けつけてくる騒ぎになっていただろうから。
不可抗力とはいえこんなエッチなの観てたって事が知られてしまったら…「驚いた、きみは存外助平なんだな」とかなんとか言われそう。とにかく想像するだけで生きた心地がしない。
再び心中で叫びながら慌てて大音量のテレビの電源を今度はしっかりと押す。
急に静かになった部屋に安堵するも、再び鶴ちゃんの浴びているシャワーの音が聞こえてしまって、すっかり動揺してしまった私は何か飲もうと冷蔵庫と思われる扉を開いた。
「え、…は…?」
しかしそれは冷蔵庫ではなかった。
目に入ったのはいわゆる大人の玩具というものだ、多分…。サーっと背中に冷や汗が伝ったような気がした。そしてまた私は心の中で叫び勢いよく扉を閉める。
な、なんなのこの旅館は…
一体どういう旅館なの…?
とにかくもう何もしないでおいたほうがよさそうだ。これ以上心臓に悪い物を見てしまったらどうにかなりそう。一連の出来事でどっと疲れが出てしまい、私はふらふらした足取りでベッドに身を投げた。