第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
お風呂から上がると、床に置いておいた衣服は消えていて、代わりに籠の中に可愛らしい浴衣が置いてあった。
濡れた服のまま部屋で待つ鶴ちゃんの元に行くため、置いてある浴衣に素早く腕を通し部屋を出ると、腰に大きめのバスタオルを巻いただけの鶴ちゃんが、小さい窓の前に座り中庭の景色を眺めていた。
「あ…」
細いと思っていた体は、ほどよく筋肉がついて引き締まっている。想像していたよりずっと男らしい体に動揺し間抜けな声を発してしまったことが恥ずかしくて、慌てて目を背け後ろを向くと、鶴ちゃんが口を開いた。
「すまん、服は洗ってもらっているんだ。流石に濡れたままじゃ帰れないからな。本丸にも遅くなると連絡してあるから問題ない」
「そ、そうなんですねっ、何から何までありがとうございます」
「ちゃんと温まって疲れもとれたかい?」
「は、はい!それはもう完璧にっ」
後ろを向いたまま思わず不自然な敬語で答えてしまうと「それは良かった」と言いながら足音が遠ざかっていった。そしてパタンとドアが閉まる音がする。鶴ちゃんはお風呂場に行ったようだ。
部屋に一人になり、襖が閉められた部屋を興味本位で覗いてみると、大きなベッドが一つ鎮座していた。