第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
だからせめて和装の鶴丸さんに合わせて着物を着たほうが少しでも彼に釣り合うんじゃないか、と一人悩んだ。
「そりゃ着飾ったきみも見てみたいが、無理することはないぜ。俺はきみと居られればそれで十分なんだからな」
「鶴丸さん…」
「何を気にしているのかは知らないが、どんなあんずでも俺の好きなあんずだ。それを忘れないでくれよ」
自身の持てない私に鶴丸さんは笑いながらそう言った。
こんな私を好きだと言ってくれる鶴丸さん。鶴丸さんが好きと言ってくれる自分を、否定しては彼に失礼だと思った。
その一方で好きな人に見てみたいと言われたからには、いつか絶対着物を着ようとも思った。今の時点では自分では着付けることも出来ないので、せめて着付けが出来るようになってから鶴丸さんを驚かせちゃおう、と心に決め、今は内緒で次郎さんに着付けを習っている。
そして日が経つに連れてキスをする回数が増えて、自然と触れ合うことが多くなって。
いつしか呼び方も『鶴丸さん』から『鶴ちゃん』へと変わっていき、当初感じていた劣等感もいつの間にか消え失せていた。