第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
「笑い過ぎても涙が出るもんなのか…?」
「はい、私涙腺がゆるいみたいですぐ涙が出るんです」
「こりゃあ驚きだ…」
「あの、もう…」
距離が近いのと、頬に鶴丸さんの手が触れていることに緊張して、ドキドキして、もう離れて下さいと言いかけたその時…
ふいに唇に温かいものが触れた。
「え…」
驚いたときにはもう唇は離れていて、ギュッと手を握られた。私の好きな少し冷たい鶴丸さんの綺麗でもある男らしい大きな手。
「きみが、…あんずが好きだ」
「…っ…………好、き…?」
「ああ、俺はきみが好きだ。……信じられないかい?」
「だ、だって……兄のようなものだって…」
鶴丸さんの言っている好きはきっと、妹を思うような好きなのだから、勘違いしては駄目だと頭で否定してしまう。
彼の私への優しさは、私が主であるからということと、妹みたいで目が離せないから、そういう理由なのだとずっと自分に言い聞かせてきた。
「それはきみが先に違うと否定したから、その方がいいのかと思って言っただけだ……」
まさか、彼も私と同じ気持ちでいてくれたなんて信じられなかった。