第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
「あ、ありがとう、ございます…でも…これはちょっと…というか大分恥ずかしいですよぅ…」
「ああ……本当にすまなかった」
「謝らないでください……これはこれで元気出ましたから。悲しくて、嫌で泣いたわけじゃないんです。鶴丸さん……ありがとう……」
「そうなのか?」
泣きながら小さく笑って頷くと同時に強張っていた体に力が抜ける。すると、クッションに体重がかかり予期せぬ音がまた出た。
ぷぅ〜…………ぷすぅ……
少し残っていた空気が力ない間抜けな音を吐き出す。真剣な表情の鶴丸さんを前に出たその音がとても場違いで、思わず笑いが吹き出てしまうと、一瞬目をぱちくりさせた鶴丸さんも追いかけるように笑った。
「あはっ、あはははは…っ」
「あっははははっ……」
お互いの顔を見ながら暫し笑いあったあと、鶴丸さんの大きな黄金色の瞳とバチリと視線がぶつかり、まるで時が止まったように静かになる。
そして、鶴丸さんの指先が目尻に触れ心臓がドキリと跳ね上がった。
「すまなかった…また涙が出てるじゃないか……これは俺が泣かせたんだよな…」
「あ、こ、これは…笑いすぎて出た涙ですから…」