第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
「……だから悪いのはそうさせたお偉いさんだ」
いつも一緒にいるからか、それとも彼の纏う空気がそうさせるのかはわからない。鶴丸さんの言葉は妙な説得力があり、私は素直にその言葉を受け取った。
養成所時代、とても優しく指導してくれた葉月さん。卒業後も私を気にかけてくれて相談に乗ってくれていた葉月さん。今の私があるのは葉月さんがずっと力になってくれていたから……
そんな彼女がああなってしまったのは、政府がそこまで彼女を追い込んだから。鶴丸さんの言う通り、きっと彼女は普通の状態ではなかったんだと思う…
じゃないと、あんな冷たい、感情のない表情なんて出来るはずがないんだ…例えそうじゃなくても…そう思わないとやりきれない。
「……鶴丸さん………そう、ですね……きっとそうですよね…」
「ああ…そうに決まってる」
「は、い……はい…」
「寒くないかい?」
鶴丸さんは確かめるように私の手にそっと触れる。でも鶴丸さんの手のほうが少し冷たかった。
「鶴丸さんの手のほうが冷たいです…」
「…なら、きみが俺の手を温めてくれないか?」
促されるままに暫く鶴丸さんの手を温めるように重ねていると、段々と自分の手の温度が鶴丸さんと同じ温度になっていくのを感じた。