第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
「謝ることはないさ。きみがそんなになるなんて、余程のことがあったんだろう?」
鶴丸さんはずっと傍にいてくれた上に抱き締めてくれていた。そんな優しい彼に対して何も話さずに、もう大丈夫だから自分の部屋に戻っていいです、なんて言える訳もなく。
私はぽつりぽつりと今日あった出来事を話した。話している最中葉月さんの言葉を口にすることで、ぶわり、とまた水の膜が私の瞳を覆って…勝手に頬を流れていく。
途中感情的になって自分でも何を言っているのかわからなくなるときがあったけど、鶴丸さんは根気よく話を聞いてくれたので、私は嗚咽を挟みながらもなんとか胸の内の全てを吐き出すことができた。
「あんずはあの娘のことが好きだったんだな‥それなのに酷い話だよなあ」
辛かったな…と言いながら鶴丸さんはまた私を抱き締めた。
「だがきっと…それは本心じゃないと思うぜ」
「え…」
「あの娘も……休む暇もなく働かされて、疲れて、ギリギリの状態だったんだろうな……決してきみを陥れたくて陥れた訳じゃない」
「……」
あんずが知っている彼女はそんな人間じゃない、そうだろ?と、悲しげな表情をしながら私の零れている涙を拭ってくれる。