第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
滅入った思考をどうにかしてこの涙も何とか止めなければと、慌てて側にあるティッシュを手に取り、メガネを外し涙で濡れている目元を覆った。
目を閉じ深呼吸をしていると、私からの返事がなく疑問に思ったのか「あんず?大丈夫なのか?」という声と共に襖が開き鶴丸さんが入って来る。
ティッシュを目元に当てたまま顔を上げられない私に「何かあったのか?」と心配そうに話し掛けてくれる鶴丸さん。私を気遣うような鶴丸さんの声を聞いてしまったら、気が緩んでしまったのと安心してしまったのとで、更に涙が溢れ出てしまった。
「……っ、ひっ…く」
「どうしたんだ…!」
「…う、うぅぅ……つ、るまるさ…っ」
泣いている私を見て、鶴丸さんは酷く驚いた顔をしたけど、直ぐに私の側に駆け寄ってきた。
その優しさが余計に心に染みると共に、何故かさっきまでの出来事が、葉月さんの言葉が、上役の罵倒が…頭にぐるぐると再生されて、更に涙が出て止まらなくなった。
思い出したくないのに、忘れたいのに頭から離れない。胸の中で沸々と湧き上がる怒りや悲しみは出口を求めて彷徨っている。
ぐるぐる渦巻く感情をどうすることもできなくて、気付いたときには鶴丸さんの胸に飛び込んでいた。