第1章 君の中に墜ちる
「っ、びっくりした」
「…」
思わず体が跳ねてしまったが大倶利伽羅は表情を変えずに私を見る。
お礼を言い綺麗に畳んだ上着を大倶利伽羅の前に差し出すと、彼は黙ってそれを受け取った。そして何も言わずにまた部屋に戻ろうとするので慌てて彼の腕を掴んだ。
「待ってっ」
大倶利伽羅は少し驚いたように立ち止まり振り返る。そして掴んでいる私の手を見た。彼のこんな表情を見るのも初めてかも知れない。珍しい表情に慌てて手を離した。
「あの、…えっと」
肝心の話を切り出そうにもここは廊下で、誰かに見られているんじゃないか、聞かれているんじゃないかとか気になってしまい無意識にキョロキョロしてしまっていたら、大倶利伽羅は怪訝な顔をした後に小さく溜め息を吐き、私を部屋に引き入れた。
大倶利伽羅は部屋の中央に座りこちらをじっと見据える。話を聞いてくれるというような素振りに、そっと障子を閉めて私も少し距離を保ちつつ彼の前に正座した。
心臓が嫌な音を立てるのを感じながらゴクリと唾を飲み込み、意を決して顔をあげ大倶利伽羅を見ると、バチリと視線がかち合った。
その射抜くような眼差しにまたしても物怖じしそうになってしまうが、何とか喉の奥から声を絞り出す。