第1章 君の中に墜ちる
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突然体がビクッとなったことで意識が急浮上した。どうやらあれからうたた寝してしまっていたらしい。
鍛錬場を見渡すと大倶利伽羅の姿はもうなかった。
「何やってんだろ…」
立ち上がろうと床に手をつくと、自身の身体に何か掛けられているのに気が付いた。黒い学ランのようなそれは大倶利伽羅の上着だ。
彼のちょっとした優しさが胸に染み、ぎゅっと上着を抱きしめるとふわりと彼の匂いがして、それだけで一人じゃないように思えて心細かった気持ちが少しずつ和らいでいくような気がした。
だけどその一方で今から自分が大倶利伽羅に伝えようとしていることを考えると、胸が酷く痛む。
余計な事は考えるな。
この方法に賭けると自分で決めたことじゃないか。
ギュッと唇を噛みしめ、そう自分に言い聞かせながら上着を手に鍛錬場を後にした。
「大倶利伽羅…」
彼の部屋の前に着きそっと彼の名前を呼ぶ。
緊張で心臓が痛いくらいに激しく動き、少しでも落ち着かせようと懸命に深呼吸しながら彼の返事を待った。
「大倶利伽羅、いないの?」
少し待ったが返事は返ってこない。
部屋の中に人の気配がしたのは気のせいだったのか、と思いながら踵を返そうとすると突然障子が開かれた。