第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
体をぷるぷると震わせて、如何にも怒っているような素振りの彼を前に、いつ雷が落ちるのかと身を縮こませていたら、血相を変えた過保護な刀達に強制的に連行されお風呂に押し込まれた。
幸いにも怪我していることを気付かれずにあの場から逃げることができて、このときばかりは過保護な刀達に感謝した。
お風呂にゆっくり浸かったあとは燭台切さんが作ってくれた温かいスープを鶴丸さんと共に飲み、体の内からもポカポカに。
その後歌仙さんはどうなったのかと気になり、鶴丸さんと様子を確かめに柱の陰からこっそり覗くと、鼻歌を歌いながら私達の服を干している彼の姿があった。
「随分と機嫌が良さそうだが何があったんだ?」
あの上機嫌な様子。おそらく泥で汚れた服は彼の手腕で跡形もなく綺麗になったのだろう。流石だ!思わず鶴丸さんと顔を見合わせてホッと一息ついたのは言うまでもない。
そして南泉さんはというと…
鶴丸さんにマタタビを与えられて、まるで陶酔したように楽しく動き回っていた。その姿はまさに猫そのもので、その日以来鶴丸さんは面白がって幾度も彼にマタタビを与え、その横で腹を抱えて笑った。
のちに、一文字一家からお灸をすえられる事になるなんて彼はまだ知らない。