第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
雨が降る中、鶴丸さんは私をおぶったまま走り続ける。
顔に打ち付けられる雨で目を瞑り、鶴丸さんの背中にしがみついて。服越しに伝わる想像よりずっと逞しい背中に、今更ながら男の人なんだ、と思い知らされた。
雨が降る音と鶴丸さんが走る足音が聞こえる中、それよりも抑えることが出来ない私の心臓がうるさく脈打っていた。
大事と言われたのは彼の主だからであり、おぶってくれているのは長谷部さん達に叱られるから。鶴丸さんは私に対して特別な感情があるわけではないということを、決して勘違いしてはいけない…
なのに、ゼロ距離の温もりに心臓のドキドキが止まらない。
邪な私の気持ちに、勘の良い彼が気付いてしまうんじゃないかと怖くて、とにかく気が気じゃなかった。
本丸についてからは、泥だらけで帰ってきた鶴丸さんと私を見た途端、歌仙さんが発狂した。
「な!その小汚い恰好はどうしたんだい!?雅じゃない!」
「二人お揃いでペアルックみたいだと思わないか?」
「ペアルックだって!?一体どこをどうしたらそうなるんだい!?」
笑いながらしれっと答える鶴丸さんに歌仙さんが声を張り上げる。