第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
こちらに背を向けて屈んで、背中に乗れと促す鶴丸さんにこれ以上迷惑をかけたくなくて、目一杯の笑顔で言う。
「さっきからあんずの方が大事だと言っているんだがなあ」
「っ、」
「それに、怪我をしているきみに歩かせたとあっちゃ俺の身も危ない」
「長谷部さん…とか?叱られちゃいますか?」
「わかってるじゃないか!なら俺を助けると思って身を任せてくれないかい?雨も暫く止みそうにないし、ここにずっと居るわけにもいかないだろ?」
「そうです、けど……」
本当は…鶴丸さんの背中におぶさってしまったら、意識してドキドキしてしまっている不謹慎な私の心を見破られそうで怖かった。
でもそんな風に言われてしまっては断れなくなってしまう。
でも…でも…重いって思われたらどうしよう…
屈んでいる鶴丸さんの背中を見つめながら、そんなしょうもない事を考え葛藤する。
観念して少しでも心臓を落ち着かせようと小さく深呼吸した後、お願いします、と言ってからそっと背中に覆いかぶされば、鶴丸さんは顔をこちらに傾けながら「よしよし、しっかり掴まっていてくれよ」と言い、雨の中にその身を投じた。