第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
あと少しで雨宿りができるというところで、普段から運動不足の私はぬめった土に見事に足を取られた。
「あっ!!」
体が大きく傾いたことで、鶴丸さんの私を掴んでいる手に体重がかかってしまう。そしてそれにより異変に気付いた彼は私を咄嗟に受け止めようとしてくれたけど…
間に合わなかった。
バシャっと勢いよく土の上に倒れ、泥だらけの私を前に鶴丸さんは焦った様子で私に手を差し出した。
「大丈夫かっ」
思わず彼の手を取りそうになったけど、自分の汚い手が目に入り慌てて引っ込めた。
「だ、大丈夫…です……」
泥だらけで擦り傷もある汚れた自分の手。
鶴丸さんの手を取ると彼の綺麗な手まで汚れてしまう。それが申し訳なくて、鶴丸さんの手を借りずに急いで起き上がった。取りあえずすぐ目の前にある屋根の下まで行こう、と足を引きずりながらそこを目指して歩く。
何故か少し走っただけなのに息切れが酷く足がもつれそうになる。
鈍臭い自分が情けなくて仕方がない。
びしょ濡れの私の顔を戦装束の袖で拭いながら「すまない、早く走りすぎた…」と申し訳なさそうにしている鶴丸さんだけど、彼の綺麗な真っ白い戦装束が泥で汚れるのが私には大問題で慌てて彼の手を止めた。