第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
「南泉さんも猫みたいに酔っ払うのかな…」
「それを確かめるのさ」
ケラケラと笑いながら店を出る鶴丸さんの後を追うようにしてお店の自動ドアを跨ぐ。
すると、突然鶴丸さんが空を見上げながら立ち止まった。
「こりゃあ、一雨くるな。雨の匂いがする」
「え、でも…予報では晴れだと…」
鶴丸さんの隣で見上げた空はまだ太陽が眩しかった。手をかざし、雨なんて降る感じではないのになぁ、と白い雲の間から覗く放射状の光線を放つ太陽を、目を細めて見ていると、ふいに私の腕を掴んだ鶴丸さんが走り出した。
「え、ちょ、…っ」
「急ぐぞ!」
有無を言わせず走り出した彼に、手を引かれるまま必死に走る。
するとポツポツと肌に雨の感触がしたと思ったら、次第にそれは強くなり。
「うそ…ッ本当に降ってきたの?今日は晴れって言ってたのに」
「女心と秋の空って言うくらいだからな。お!丁度いい!あそこまで走るぞ!」
走りながら一歩後ろにいる私に振り返った鶴丸さんが指で指し示した方向を見ると、休憩所のような一角があるのが見えた。
強く手を引かれ、それに合わせて早めた足が地面を踏むごとにばしゃばしゃと音を立て、一歩踏み出すごとに雨が跳ね返りどんどん足元を濡らしていく。