第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
勿論そういう訳にはいかず、レジの前で急いで鞄から財布を取り出そうとしたはいいが……
やだちょっと、今日は私が出すって言ったじゃない
でも連れてきてもらったんだから私に払わせて!?
いいって!
いいから!
いつぞやで見掛けたファミレスで、レジを前にお金を手にお互い一歩も引かない人達のやり取りが頭に浮かんだ。その傍らで店員さんが困ったように笑っている姿。
このやり取りはいつまで続くんだろうって思ったっけ…
今私がお金を出したら、鶴丸さんに恥をかかせてしまうんじゃないか、そう考えて鞄につっこんだ手を引っ込めた。
そして店を出た後にすぐ会計のことを切り出すと、「まったくきみは律儀だなあ」と苦笑しながら頭を掻いている。
「でも私が奢るって約束だったじゃないですか」
「まあそうなんだが……すまない。本当の事を言うと最初から払ってもらう気はなかったんだ。そうでもしなけりゃあんずは来てくれないだろ?」
「…そん、なこと…」
「あるだろ」
「…」
鶴丸さんの言う通りだった。
言い返すことが出来ない私を鶴丸さんは、少し切ないような表情を浮かべながら見つめている。