第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
不可抗力とはいえ、楽しくて思った以上にゆっくりしてしまった。もしかしたら長谷部さんと蜂須賀さんに遅いって言われてしまうかも知れない、とひやひやしながら戻ったけれど、彼らは怒ることなく迎えてくれた。
そればかりか仕事も片付けてある。
「おかえり。楽しかったか?」
「蜂須賀さん…仕事を押し付けてしまってごめんなさい…」
「その程度のこと気にすることではないし、あんずが謝ることではないよ?それより、息抜きは出来たのか?」
「……はい…楽しかった、です…」
「そうか良かった。それならまた行ってくるといい。あんずは少し根を詰めすぎるところがあるから」
柔らかな表情の蜂須賀さんが私の肩を労うようにポンと叩いてくれている横で、長谷部さんも「主、蜂須賀の言う通りです。たまには羽を伸ばす事も大事ですから。それに楽しめたのなら尚の事、仕事のことは俺にお任せ下さい!」と言ってくれた。
彼らの言葉に甘えて、1週間後約束通り鶴丸さんとまたお出かけした。そしてやっぱり前回と同様眼鏡は取り上げられてしまった。
その上、今度は私が出すつもりでしっかり財布も持って行ったのに、鶴丸さんは「こういうのは男が払うもんだ」と言って私に払わせようとしてくれない。