第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
「え…っ、」
「何度食べてもうまいな!」
もぐもぐ口を動かして嬉しそうにしている鶴丸さんにあっけに取られて放心状態の私の手から、今度は鶴丸さんがスプーンを取りわらび餅を掬った。そして「あーん」とこちらに差し出してくる。
「や、わ、私自分で食べられますからっ」
「お返しだ。ほら」
「……」
「ほら、あーん」
おずおずと口を開くと、口の中にそっとわらび餅が含まれる。
結局、無邪気に笑う鶴丸さんに最後まであーんされて、断ることが出来ない私はされるがままになってしまった。当然味なんて分からなくなるくらいには緊張した。
これからはちゃんとNOと言える人間になりたい…
だけど…
一緒にいるこの時間が普段とは違ってとても輝いて見えて、胸のドキドキが止まらなかったのも事実だ。
「ご馳走様でした、代金は帰ったらお返ししますね」
「全く…きみは本当に自分の事になると我儘も言わず遠慮するんだなあ。今日は俺の奢りだと言ったはずだぜ?」
「でも…」
「なら今度あんずが俺に奢ってくれないか?それでいいだろ?」
「それなら……じゃあ…絶対ですよ?」
「決まりだなっ!」
その日はそんな約束をして本丸に帰った。