第2章 儚く切ない記憶の中で《前編》
すると小さく笑う声がして正面を見ると、鶴丸さんがまたしても私を見つめていた。
その表情があまりに優しい上に、これ程綺麗な人に見つめられているということに心臓が勝手に騒がしくなってしまう。
「あの…な、にか…」
「いや、きみがあまりにもうまそうに食べるから」
「あ…、ご、ごめんなさいっ私ばっかり食べて…美味しかったからつい…恥ずかしい…」
「謝ることなんてないさ、あんずが喜んでくれて俺も嬉しい。何よりあんずがそんなに幸せそうに食べてくれるなんて連れてきた甲斐があったというもんだ」
「鶴丸さんも…食べます…?」
お茶しか飲んでいない鶴丸さんに、まだ口を付けていない場所の端っこのわらび餅を掬い目の前に差し出すと、彼は驚いたような、キョトンとした顔をした。
そんな彼の表情を見て余計なことをしてしまった、と後悔が押し寄せる。
「や、やだごめんなさいっ!忘れて下さい…っ」
そういえばスプーンは私が口を付けたスプーンだった…鶴丸さんにしてみれば不快に決まっているはず。恥ずかしくなってスプーンを握る手を引っ込めようとした瞬間、鶴丸さんの顔が近付いてきてパクンとスプーンに喰らいつかれた。